「そうか。じゃあ、また別のドアを開いてみるかな?」
亮太は急いで、南側の窓の手前に浮かんでいる、丸くて白いドアを開きました。
ドアの向こうには、ぽつんと一人で公園のベンチに座っているおじいさんがいました。うつむいたままじっとしているので、公園に遊びにきた子供たちは気味悪がって近づこうとしません。でも、別に死んでいたわけではないのです。
とつぜん、おじいさんが涙を流しながら、何かつぶやき始めました。
「わしの人生は散々だったわい。必死に勉強して一流大学に入り、そのあと大企業に入って定年まで働いたけど、今になって思い返せば、実につまらん人生だったのう。わしも歳だから、もう長くはない。もっと別の人生を歩んでみたかったのう」
亮太は悲しくなってきて、もうそれ以上見ていることはできませんでした。
「どうじゃ、これで満足できたかな?」