亮太はそんなことを考えながら、原稿用紙とにらめっこをしていました。伸吾と違って亮太は、なりたい職業も、かなえたい夢も見つけられずにいたのです。
ただ、あえて言うならば、亮太は平凡な人生を送りたいと思っていました。一流大学に入学して、大企業に就職して、平凡なサラリーマンで一生を終えることができれば、それで満足だと考えていたのです。
でも、そんなことを正直に書けば、いかにもつまらない人生になってしまいそうな気がしてしかたありません。亮太は、楽しそうな自分の人生をあれこれと思い浮かべてみましたが、考えは少しもまとまりません。
とうとう、終わりのチャイムが鳴ってしまいました。幸いなことに、亮太以外にもまだできていない友だちが何人かいたので、提出は明日の朝ということになりました。