「美貴ちゃんのこのポーズかわいいねえ」
「靖子だってこれかわいいよ」
正志は楽しそうな会話が気になったので、仲間に入れてもらった。写真は二人で旅行した時に撮ったものらしかった。正志は靖子にたずねてみた。
「二人で北海道に行ったの?」
「はい。月火水と2泊3日で行ってきたんです」
「えっ、もしかしてこの前の月火水?」
「そうですよ。昨日帰って来たところなんです。それがどうかしましたか?」
「あっ、いや」
「小川さん。美貴ちゃんのこの写真かわいいでしょう?」
「・・・・・」
そんなはずはない。正志は何かの勘違いだと思った。あるいは二人が自分をからかっているのかもしれないと思った。とにかくそんなはずはない。しかし、写真に刻まれた日付は確かに一昨日の火曜の日付だった。彼は少し動揺したが、やはり二人がグルになっているとしか考えられなかった。写真の日付にしても自分を驚かせるためのいたずらだろうと思った。
彼女達が交わす会話はあまりにも自然だった。正志はだんだん不安になってきた。そこで彼は、美貴が昨日の昼過ぎに神戸にいたことを証言してくれる人がいないか考えた。そう、昨日は確か二人でこのサークル室まで歩いて来たはずだ。その途中で誰かに会わなかっただろうか。彼には思い出せなかった。では、サークル室の中で誰かに会わなかっただろうか。そうか、昨日はミーティングが延期だったんだ。だから俺はこの部屋に入らなかったんだ。
彼は美貴から真実を聞き出そうと思った。しばらくして彼は、運よく美貴と二人っきりになれた。そして、さっきからどうしても確認したかった内容を切り出した。
「藤井さん。一昨日の火曜のことだけど・・・・・」
「火曜のこと?」
「火曜の晩に・・・・・」
「なんですか? はっきり言ってくださいよ」
「火曜の晩に君を見かけたんだけど」
「それは人違いですよ」
「いや、人違いではないんだ。確かに君だった」
「小川さん。そんなことあるわけないでしょ。その日、私は北海道にいたんですよ。さっきちゃんと写真も見たでしょ」
「そうかなあ」
「そうですよ。ミステリーじゃあるまいし。あまり変なこと言うんだったら、お土産あげませんよ」
美貴はちょっと怒った素振りを見せてから、正志にお土産の包みを手渡した。
「ちょっと待って。この北海道旅行はいつ計画したの?」
「えっと、9月の終わり頃かな。この前靖子の家に行った時も北海道旅行の話しをしてたでしょ」