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 彼女はたぶん明日からこの場所を通るたびに悲しくなるだろう。そして、待ち合わせ場所を通るたびに、雨宿りをするたびに、動物園に行くたびに、夜景を見るたびに、そしてあのパンツを見るたびに悲しくなるだろう。その悲しみは自分にとっても共通の悲しみになるに違いない。今はただ陽子との思い出の数だけ悲しくて胸が一杯だった。でも、こんな悲しみを味わうくらいなら出会わなかった方がよかったとは決して思わない。
 「思い出をありがとう」
 正志は陽子の面影にそうつぶやいて、その場を立ち去った。

 その日の晩、正志はベッドに入ってから水晶玉をしっかりと握り締めて、どうか夢の中でチャチャと会えますようにと祈った。それからしばらくのあいだ、チャチャの顔を思い浮べながら幸せな気分に浸っていた。彼女の顔はとても美しくかわいかった。
 正志はいつのまにか眠ってしまっていた。そして、彼は夜中にふと目を覚ました。すると、どういう訳か自分のかぶっている布団が眩しく光っているではないか。やった、水晶玉のあの光だ。正志は飛び起きた。そして、自分の手の中をそっとのぞいた。やっぱり思ったとおり、手に握り締められた水晶玉がプリズム色に輝いていた。
 きっとチャチャのしわざに違いない。きっとチャチャに会える。正志はそう思って、ベッドの脇にそっとその玉を置いた。彼は胸をワクワクさせながら、彼女があの美しい姿を現してくれるのをじっと待った。しばらくすると、前と同じような白っぽい霧が立ち込めてきたかと思うと、すぐにその霧はひいていった。そしてその瞬間、チャチャの姿がいきなり正志の目に飛び込んできた。彼女は前と同じ白っぽい羽衣のような衣装を着ていた。ただ、美しさは前より一段と増したように思えた。正志は思わず叫んだ。
 「チャチャ、会いたかったんだ」
 「一体どうしたの? そんな大声を出して」
 「どうしても君に会いたかったんだ」
 「そう。それは光栄です」
 チャチャがベッドに腰を降ろしたので、正志もその横に腰掛けた。彼はもううれしくてしかたなかった。それはまるで、子供が久しぶりに母親と会ってワクワクしている気持ちに似ていた。彼はここ数日間チャチャに会いたくてしかたなかったのに、今日まで会うことができなかった。だから、子供みたいにそのことをとがめてみたかった。それに、他にも話してみたいことが山ほどあった。
 「どうして僕がこんなにも会いたいと思っていたのに、今日まで君は現れてくれなかったの?」
 「それはしかたのないことなの。子供みたいなこと言わないで」
 チャチャはそう言って、すぐ隣にいた正志を軽く抱き寄せた。彼女の肌のぬくもりと胸の柔らかさが正志の体に伝わってきた。彼はずっとこのままの状態でいてほしいと思ったが、チャチャはふいに彼から離れで再び普通に座り直した。正志も気を取り直して、話しを続けることにした。
 「実はあれからいろんなことがあってねえ」
 「そうね。全部知ってるわよ」
 「えっ、全部知ってる?」
 「そう。あなたのことはなんでも知ってるの」
 「それじゃあ、この1か月で僕がいろんな恋愛をしたり失恋したりしたことも?」
 「ええ。もちろんよ」
 「ひどいなあ。だったら、少しくらい協力してくれてもいいじゃないか」
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