「えっ、どういうこと?」
「確か君は僕の恋愛の手助けをしてくれるんじゃなかったの?」
「ええ。そうよ。だから、してあげたでしょ」
「全然してくれなかったじゃないか」
「いいえ。私はちゃんとあなたの手助けしたわ」
「確かに恋愛にはいろいろ巡り合えたけど、それじゃあどうして、そのたびに失恋ばっかりだったのか教えてほしい」
「それはあなたがそう望んだからよ」
「えっ、僕がそう望んだ?」
「そう。あなたがそう望んだから思いどおりになっただけのことよ」
「よくわからないなあ。もしかして僕が失恋を望んだってこと?」
「そう。恋愛も失恋も望んだってこと」
「やっぱりよくわからないなあ。ちゃんと説明してくれる?」
「いいわ。それじゃあ、じっくり振り返ってみましょ。まずは吉田靖子の場合。彼女の部屋に行って危険な関係になりそうになった時、あなたは一体どう思った?」
「ええと。これはまずいなあって思った」
「そう。そういう関係に発展するのを期待してなかったでしょ?」
「まあ、確かにそうだな」
「だから私の力で邪魔が入るように仕向けたのよ」
「えっ、君が邪魔したの? せっかくいいところだったのに」
「そうね。残念だったわね。でも、惜しいと思ったあの気持ちがあったからこそ、次のステージヘ進めたのよ」
「なるほど。そう言われればそうかもしれない」
「次は藤井美貴の場合ね。彼女の部屋に二度目に泊まった朝、あなたは彼女との関係をどう思ってた?」
「彼女と特別な関係になれてうれしかった」
「それだけ?」
「自分だけのものにしたいと思った」
「そうね。それからどう思ったの?」
「それから、彼女とつきあっている男の存在が気になり始め、僕と彼女との関係がこのままうまくいくとは思えなくなってきた」
「だから、あなたは別れを選んだのね」
「いや、僕が別れを選んだ訳じゃない。彼女が嘘の北海道旅行の話しを持ち出したり、訳の分からないようなことをするから、それで終わらせようと思ったんだ」
「あなたは彼女の不思議な振る舞いに堪えれなかったのでしょ? じゃあ、結局それでよかったじゃない」
「まあ、そうだな」
「次は石井麗子ね。あなたは彼女のことをどう思っていた?」
「心から彼女を愛してた」
「そう。でも、彼女との不自然な関係に不安をいだいていたでしょ?」