「そりゃあ不安はあったけど、彼女とのことは十分に納得していた」
「あなたは納得していたつもりでも、心の奥底にはかなりの不安があった。だから別れが訪れたのよ」
「でも、あんな別れ方になるとは」
「そうね。しかたなかったのよ」
「もしかして、これも君がやったことなの? そうだとすれば、絶対に許さない」
正志は麗子のことを思い出して、ぶつけどころのない怒りが再び込み上げてきた。彼は感情の高まりで涙がこぼれるのを止めることができなかった。そして、たとえチャチャであってもそれだけは許せないと思った。彼女もあせって言い返した。
「ちょっと待ってよ。いくら私でもあそこまではできないわよ。気の毒なことだと思うけど、彼女自身が選んだ道だからしかたないのよ。でも、あなたにとってはそれが結果的にはよかったのよ。だって、ああでもなってないと、あなたは彼女のことを一生あきらめきれてなかったと思う」
「でも、死ぬことはなかったのに」
「そうね」
「・・・・・」
「最後に守山陽子。彼女の場合ははっきりしてるわね。あなたは彼女が理想の女性のイメージとはちょっと違うことに気づいて、あなたは自ら別れを選んだ」
「そう。理想の女性が他にいることに気づいてしまったから」
「それで、その理想の女性とは?」
「それは・・・・・」
「誰?」
「言いたくない」
「お願い、言って」
「実は・・・・・チャチャ、君だ」
「ふふふ。わかっていたけど、ちょっぴりその言葉を聞いてみたくなったの」
「チャチャ、僕は真剣なんだぞ」
「ごめんなさい」
「でも、本当そうなんだ。陽子と恋してた時、突然チャチャが理想だと気づいてしまったんだ」
「そりゃあ、当然よ」
「えっ?」
「だって、私はあなたが作り出したものだから」
チャチャは正志に聞こえないほどの小さな声でそうつぶやいた。正志は彼女の気持ちが知りたくてしかたなかったので、さらに先を続けた。
「ところで、チャチャの理想のタイプは?」
「そりゃあ、あなたよ」
「えっ、本当?」
「本当よ」