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 「じゃあ、僕が君にこんなに会いたいと思っていたのに、どうしてなかなか会ってくれなかったの?」
 「それはさっき言ったとおり、しかたなかったの」
 「じゃあ、会いたくなった時にどうすれば会ってくれるのか教えてほしいんだけど」
 「それは無理よ」
 「どうして?」
 「どうしても」
 「じゃあ、今度いつ会ってくれる?」
 「そのことなんだけど、実は会えるのは今日で最後なの」
 「えっ、そんな」
 「今日で11月も終わりでしょ。だから、会えるのも今日が最後というわけ」
 「そんなのいやだ」
 「しかたのないことなの」
 「僕はチャチャなしで来月からどうやって生きていけばいいの?」
 「普段どおりで大丈夫よ。あなたは来月から恋愛運が下がるけど、そのうちまた上昇してくるから安心して。あなたのことは私がいつも見守っているから」
 チャチャはまるで子供に言い聞かせるかのように言った。正志もこの時チャチャが母親のように思えてきて、自分でも恥ずかしくなるくらい甘えたい気持ちで一杯だった。再び彼の目からは自然に涙がこぼれ落ちた。チャチャの目にも輝くものが見えた。正志は声をつまらせながらチャチャにたずねた。
 「本当にもう会えないの?」
 「そうね。またいつか会えると思うけど、その時きっとあなたは私に気づかないわ」
 チャチャのその言葉は後半から涙声に変わっていた。その声が正志の胸に切なく響いた時、彼の大粒の涙を止めることはもう誰にもできなくなっていた。
 「そんなこと絶対にないよ。チャチャを忘れることなんてできない」
 「・・・・・」
 「・・・・・」
 無言のまま時間はどんどん過ぎていった。正志の涙もようやく落ち着いていた。
 「ねえ。最後だからどこかヘ一緒に遊びに行きましょ」
 ふいにチャチャはそう言うと、軽く正志の手を取った。正志が顔を上げてチャチャを見ると、彼女はいつのまにか普通の女性が着る服に着替えていた。こんな夜中にどこに遊びに行くのだろうと正志が不思議に思っていると、今から時空を超えて旅をするのだとチャチャは説明してくれた。
 チャチャが正志の手をしっかりと握ったかと思うと、目の前が急に真っ暗になった。そして、ほんの数秒後には見知らぬ世界に二人で立っていた。そこがどこかもわからなかったし、一体何が起こっているのかもわからなかった。でも、正志は少しも恐くなかった。チャチャと一緒だったから、不思議な旅が楽みでしかたなかった。
 正志とチャチャは実にいろいろな場所を旅して、そこで思いっきり楽しんだ。例えば、春の野原を走り回ったり、浴衣を着て盆踊りをしたり、運動会で弁当を食べたり、こたつでテレビを見たりした。正志はどんな場所に行ってもこの上ない幸せな気分を満喫することができた。彼女との時空を超えた旅は一晩じゅう続いた。

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